小売売上高(monthly retail sales)はその名の通り、小売業の売上高を集計したデータです。 調査は小売業の企業に対して行うのですが、彼らの顧客はほとんどが個人の消費者なので、売上の動向を見ていれば、個人の消費活動が活発かどうかを把握することができます。この指標は、米商務省が集計し、翌月の半ばに発表されます。
景気や雇用が上向きで消費者が経済の先行きに対して楽観的な見通しを強めれば、その分買い物に多くのお金を使うようになります。 反対に景気が悪化し雇用の不透明感が強まれば、消費者は財布の紐を締め、余計なものにお金を使わなくなるでしょう。
名称 | 小売売上高 Monthly Retail Sales |
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発表機関 | 商務省(Department of Commerce) |
発表時期 | 月次(毎月中旬) |
概要 | 米国内の小売業・サービス業の売上高を集計したもので、個人消費の動向を表している |
特徴 | 変動が激しい自動車を除いたコア部分の注目度が高い |
小売売上高は、その月に小売店で販売された金額が前月や前年からどの程度増加したのか、あるいは減少したのかで表されます。 細かい内訳を見ると多くの項目があることが分かりますが、その中で市場がまず注目するのは、全体の売上高と自動車を除いた売上高の2つです。
小売売上高は、販売金額の変化を見るものです。自動車は個人が購入する商品の中でも金額が大きく、その売上の増減はどうしても全体に影響を及ぼすことになります。 また一度購入すれば、次に買い替えるまでの期間も長いため、消費者の日々の消費行動を見るのには適したデータと言うことができません。 そのために、自動車やその部品(Motor Vehicle & Parts Dealers)を除外したい数字が重要になってくるのです。
このほか、ガソリンスタンド(Gasoline Stations)売上高を外した数字も注目されることが多いです。 車社会の米国において、ガソリンは日々の生活に欠くことはできません。消費者の景況感によって消費量が大きく変化するよりも、どちらかと言うとガソリン価格の変動によって、ガソリンスタンドの売上高は増加したり減少したりする割合が大きいです。 個人の消費行動をそのまま表しているわけではないと言うのが、ガソリンスタンドの売上を除外する理由です。
このほか、建設資材や造園(Building Material & Garden Equipment)も、日常の消費活動に含まれてることはないと言う理由で除外されることがあります。 こうした項目を全て除外したものをコア指数として重視するアナリストもいます。
売上高が大きく増加したり減少したりといったサプライズとなった場合は慌ててその数字に反応するのではなく、どのような項目が大きな変動をもらたらす要因になったのかを、まず確かめる必要があるでしょう。 見た目は大きな増加や減少が見られたとしても、上述の項目を除いて見ると大した変化ではなかったと言うこともありますし、それとは逆に全体では変化がなくとも、コア指数は意外に大きく増加していたと言うこともあります。
小売売上高の特徴として、季節的な傾向や天候の影響がハッキリと出やすいことも挙げられます。 その代表的なものは、毎年11月の第4木曜日の感謝祭(Thanksgiving)翌日のブラックフライデーからクリスマスまで行われる「年末商戦」でしょう。 この期間、米国では家族や友人などへのクリスマスプレゼントを買うためセール品を求めて街に繰り出し、多くの金額を買い物に費やします。 11月後半から12月というのは、1年のうちでも一番売上高が増加する時期なのです。
また天候に対しても十分な注意が必要です。年末商戦は小売業者にとって書き入れ時ではありますが、この間に悪天候が続くと状況は変わってきます。 人手が多くなる週末などに中西部や北東部の大都市が猛烈な寒波に見舞われ、人々が外出できないような状態が続けば当然ながら売上も落ち込みでしょう。 そうしたことからも、小売売上高は変動が意外に大きい指標ということが言えるでしょう。サブライズが飛び出し、相場が激しく動くことも多いだけに十分は注意が必要です。