産業革命期、石炭採掘では有毒ガスによる事故が多発していました。 その危険を防ぐため、鉱夫たちは3羽のカナリアを連れて坑内に入り、1羽が鳴き止むと作業を中止しました。 それほどカナリアは敏感で、命を守る警告役だったのです。 私は金融の世界にも同じような「カナリア」があると思っています。それが金利です。
金利とは、お金を借りたときに支払う「レンタル料」のようなものです。 例えば、銀行からお金を借りると利息を支払い、逆に銀行に預金すると利息を受け取ります。 この利息の割合を示すのが金利です。
金利は経済全体に大きな影響を与えます。金利が高いと、企業は借入コストが上がるため投資を控え、 消費者もローンを組みにくくなります。その結果、企業の設備投資や雇用が減少し、消費も冷え込むため、 経済全体が減速します。
逆に金利が低いと、借入がしやすくなり企業の投資や消費者の購買が促進され、 経済活動が活発化します。企業は新規事業や設備投資に積極的になり、雇用が増加します。 消費者も住宅ローンや自動車ローンを組みやすくなるため、消費が拡大し、経済全体が成長します。
中央銀行は景気の過熱やインフレを抑えるため金利を上げたり、 景気を刺激するために金利を下げたりします。
金融市場では、金利は「リスクの温度計」とも言われます。金利の動きを見ることで、 投資家がどれだけリスクを取ろうとしているか、経済の先行きをどう見ているかが分かります。 だからこそ、金利は金融の世界における「カナリア」なのです。
一口に「金利」といっても、実はさまざまな種類があります。それぞれ異なる役割を持ち、 経済や金融市場に異なる影響を与えます。主な金利の種類を理解することで、 経済ニュースや市場の動きをより深く読み解くことができます。
中央銀行が金融政策の手段として設定する金利です。日本では日本銀行の政策金利、 アメリカではFRBのFF金利(フェデラルファンド金利)が代表的です。 この金利が変動すると、銀行間の貸出金利や預金金利など、あらゆる金利に波及していきます。
金利は借入期間によって「短期金利」と「長期金利」に分けられます。 短期金利は1年未満の借入に適用される金利で、主に中央銀行の政策金利の影響を受けます。 一方、長期金利は10年国債などの利回りを指し、市場の需給や将来の景気・インフレ期待によって決まります。 長期金利は住宅ローンや企業の設備投資ローンに影響を与えるため、経済全体への影響が大きいとされています。
名目金利は、表面上の金利のことです。一方、実質金利は名目金利からインフレ率(物価上昇率)を差し引いたものです。 例えば、名目金利が5%でもインフレ率が3%なら、実質金利は2%となります。 投資判断をする際には、この実質金利を見ることが重要です。なぜなら、お金の実質的な価値の変化を反映しているからです。
固定金利は、借入時に決まった金利が返済期間中ずっと変わらないタイプです。 将来の金利上昇リスクを避けたい場合に選ばれます。一方、変動金利は市場金利の変動に応じて定期的に見直される金利です。 金利が低いときには有利ですが、金利上昇局面では返済負担が増えるリスクがあります。